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本当は黙っていれば楽だったのに、
あそこで引けなかったと思うことがあります。
大きなことではありません。
職場で誰かが軽く扱われたとき。
約束が曖昧にされそうになったとき。
自分だけが少し損をすると分かっていても、
そのまま流せなかったとき。
あとで考えれば、
うまくやり過ごす方法はあったのかもしれません。
けれどその場では、
どうしても引けなかった。
そういうことがあります。
損か得かだけで考えれば、
黙っていた方がよかったのかもしれません。
空気を壊さず、
自分も傷つかず、
その場を過ぎることもできたはずです。
それなのに、
胸の奥で、
それは違うと思ってしまう。
忠という言葉は、
今では少し重く聞こえます。
使い方を間違えれば、
人を縛る言葉にも見えます。
けれど、
人が何かに対して誠実であろうとするとき、
そこには損得だけでは測れないものがあります。
誰かのため。
約束のため。
受け取ってきたもののため。
自分が大事だと思ったもののため。
それが何であるかは、
簡単には言えません。
ただ、
あそこで引けなかった自分の中に、
何かを守ろうとする心があったのかもしれない。
そう思うと、
その日の苦さも、
少しだけ違って見えてくることがあります。





