始まりを知らずに歩いていた

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古い地名の看板を見て、
少しだけ足が止まることがあります。

いつも通っている道なのに、
その名前がいつからそこにあるのか、
考えたことはほとんどありません。

町の名前。

川の名前。

神社の名前。

昔からそう呼ばれてきた場所の名前。

普段は、
ただの目印のように見えています。

けれど、
ふとした瞬間に、
その名前にも始まりがあったのだと思うことがあります。

誰かがそこに住み、
誰かがその名を呼び、
何度も人の口にのぼり、
長い時間の中で残ってきた。

そう考えると、
ただ古いというだけでは片づけられないものが、
そこにあるように感じることがあります。

国の始まりという話も、
遠くに置けば、
ただの物語のように見えます。

本当にあったことなのか。

後の人が語り継いだことなのか。

今の暮らしと何の関係があるのか。

そう思うこともあります。

けれど、
始まりをまったく知らないままでは、
自分がどこに立っているのかも、
見えにくくなることがあります。

家にも始まりがあります。

町にも始まりがあります。

人の暮らしにも、
そこへ至るまでの時間があります。

国の始まりを考えることも、
遠い昔を眺めるだけではなく、
今の自分が立っている場所を、
少し確かめることなのかもしれません。

古い地名の看板を通り過ぎたあと、
いつもの道が、
ほんの少しだけ深く見えることがあります。

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