探す前からそこにあった

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何か大切なものは、
どこか遠くにあるような気がすることがあります。

もっと新しい考え方。
もっと分かりやすい答え。
もっと役に立つ方法。

そういうものを探しているうちに、
目の前にあるものを、
ずいぶん軽く見ていたのかもしれません。

朝、いつもの茶碗を使う。
玄関で靴をそろえる。
誰かが何も言わずにゴミを出している。
食卓に湯のみが置かれている。

どれも特別なことではありません。

あって当然で、
続いて当然で、
わざわざ考えるほどのことではないように見えます。

けれど、
少し疲れた日には、
そういう当たり前のものが、
急に違って見えることがあります。

何かを失ったわけではありません。

ただ、
いつも通りに置かれていたものが、
いつも通りにそこにあることに、
ふと気づくことがあります。

探していたものは、
もしかすると、
最初から近くにあったのかもしれません。

それを大切にしていたかどうかは、
また別の話です。

便利なものは増えました。
新しい言葉も増えました。
すぐに調べられることも増えました。

それでも、
人が本当に頼りにしているものは、
それほど派手な形をしていないように思います。

毎日を続けるための小さな習慣。
誰かが黙ってしてくれていたこと。
昔から残っている言い方。
家の中で、なんとなく守られてきたこと。

そういうものは、
見ようとしなければ、
ただの背景になってしまいます。

昔の人なら、
こういうものをどう見ていたのでしょう。

新しいものを求めながらも、
すでにあるものを、
今より少し丁寧に見ていたのでしょうか。

分かりません。

ただ、
何かを探しに行く前に、
すでに受け取っているものがあります。

そう思うと、
いつもの茶碗や、
玄関の靴や、
食卓の静けさが、
少しだけ違って見えてきます。

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